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というか、ディズィーがぐずっているというか・・・でもジャスティスにも原因があります。
幸せ親子をかくのも好きだけど、この二人で幸せしか考えられないってことはないわけで、むしろ逆のが多いわけで・・・・。
泣ける。
何度目になるだろうか。 十とはいわないまでも、幾度かは目にした光景である。
部屋の空気は重かった。
ディズィーのお願いに、ジャスティスが応える。 それは他愛ないものが殆どだが、相手がジャスティスとなると無理難題へと変わることもある。 だが、ジャスティスも極力叶えようと、努力も譲歩もしていた。 微笑ましい母娘である。 それでも出来ないものがないわけではなく、そういう時はジャスティスは「すまない」と一言いって黙ってしまい、ディズィーも我が侭が過ぎたと詫びた。 それもまた微笑ましい。
のだが。
今、ディズィーは背中を壁にくっつけ、膝を抱えていた。 ジャスティスは反対側へと距離をとり、そんなディズィーを見ている。
「ディズィー・・・・今日はもう帰りなさい」
ジャスティスの言葉に、ディズィーは小さく肩を震わせると、ゆっくりと涙で濡れた顔を上げた。 何かをいおうとしているようだったが、唇が震えるのか上手く出てこない。 ジャスティスはディズィーの言葉を静かに待っていた。
「やです」
ようやく出てきたのは簡潔な拒否。 ジャスティスは少し目を伏せ、
「いても不快なだけだろう?」
「不快じゃないです」
「では不愉快といい換えよう」
「不愉快でもない」
「嫌いだといった相手と、無為に顔を突き合わせるのは不快ではないと?」
ディズィーの目を見ながら、ヒタリといったジャスティスの言葉、それを受けたディズィーの目には見る間に涙が溜まる。
「だって・・・違・・・お母さんが・・」
しゃくりあげながら、ディズィーはゆるゆると首を振る。 顔を覆って泣き出したディズィーを見るジャスティスの目も、暗く曇っていたが、決してディズィーに手を伸ばすことはしない。
「お母さん・・・私のことは嫌いですか?」
「世界全てがお前を嫌おうと、私はお前を愛している」
「じゃあ・・・大事?」
「もちろん」
短い肯定の言葉を受け、ディズィーの顔は晴れるかと思えたが、その表情はまだ暗い。 じゃあ・と言葉を続ける。
「私が嫌いっていったの・・・悲しかったですか?」
「いや・・・」
「もう!お母さんの馬鹿!」
堂々巡る会話に、ディズィーはそういってまた顔を覆って泣き始めた。 それを前に、ジャスティスは腹の底で深い溜め息をついていた。
「あぁ・・・・気まずい」
「何度目だ?」
「数える気になれんだろう・・・・覚えていないし」
「なんでこうなったんだっけ?」
ヴィーの言葉に、クリフとテスタメントは顔を見合わせて、どちらからともなく深い溜め息をついた。
「・・・経過としては、ディズィーのお願い・・から始まったと思う」
「それをジャスティスが出来ないと断ったんだな、ま・・・・プライドが許せんという理由か、いつも通り」
あぁいつも通り・と頷くヴィーに、テスタメントは小さく呻きながら、
「ディズィーが拗ねたのまではまだ・・・良かった?んだが」
「『もう来ない』なんていわなければ良いのに、その後のジャスティスの一言がなー」
「『構わない』だからな」
「なんというか・・・突き放しては・・聞こえるな」
「無関心にも聞こえるね」
「ディズィーがそこを堪えて『嫌い』なんていわなければなぁ・・・抉れなかったのに」
「『それも仕方ない』だからな・・・ジャスティスは」
「で、ディズィーが泣き出す・と」
「それから先刻の会話がループか・・・・胃が痛いわ」
腹を擦るクリフに、テスタメントは心配そうに顔を覗き込みながら、
「ストレスで・・・・仕方ない、今晩はお酒は止めておきましょうね、父上」
「テスタメント・・・心配してる割には・・・」
「父上の身を思ってのことですから」
えぇー・と不満げな声を上げるクリフを余所に、壁に耳をつけているヴィーの肩を叩くテスタメント。 振り返ったヴィーに、
「話はまとまりそうか?」
「そろそろ・・・ディズィーが折れると思うんだよね」
「ジャスティスは曲げないからな・・・」
クリフの部屋で壁越しに胃を痛める三人。 ジャスティスは気付いていたが、多少なりと要因が自分である以上は、あえて口を出さないでいた。
ジャスティスの言動に言い訳をさせてもらうと
・嫌いといわれたことは悲しくない→嫌われて当然の身の上で、悲しいと思うのも贅沢だと思っている。
・もう来ないといったことに対して仕方ない→ディズィーのすることに干渉する気はないから、来ないなら来ないでそれでも構わない。来てくれてる現状がむしろありえない。
・嫌いといわれての構わない発言→元より好かれるような親じゃない。
結果、ディズィーが寂しい思いをする・・・と。 ジャスティスはディズィーを大事に思ってるけど、普通の親子間にはない一線を引いてる感じ。
誰も幸せじゃない寂しいSS。